パプリカ

つけた者同士が夢の世界を共有できるシステム「DCミニ」が何者かの手により盗まれた。やがて人々を狂気に満ちた夢が襲い、次々と精神を崩壊させられてゆく。現実と夢の境界が危うくなり、街のあちこちで常識を超えた変貌が起き始めた。事態を食い止められるのはただひとり、「夢探偵」パプリカだけ。夢の世界にだけ存在する、とびきりキュートなそばかす顔の少女。夢と現の狭間を変幻自在にくぐり抜け、彼女は軽やかに狂気の中枢に迫る。


今敏作品は「東京ゴッドファーザーズ」しか知らないんですが、あっちがストーリー性重視のウェルメイドなコメディだったのに対し、「パプリカ」は物語よりもビジュアルが主役。毒々しい夢の世界を具現化したイメージの嵐に酔いしれる映画ですね。なぜ「毒」かというと、「DCミニ」で夢の世界を共有するのはお医者さんとそのクライアントで、目的は精神的治療のためという設定。なので、主人公のパプリカ(と観客)は、精神病患者の混乱した悪夢をのぞくことになるのですが、この「狂気の悪夢」のヴィジュアルがとにかく今作のメインです。「誰も見たことがないものを!」という意気込みのもとに描かれたであろう、オモチャや家電、動物たちの狂乱のパレード。どぎつい彩色と異様なまでの描き込み密度で、まさにイメージの洪水といった感じです。それらが一様に意味不明な七五調セリフを叫びながら練り歩くので、観ているこっちの頭のなかも次第にグルグルしてくるという麻薬のよーなディープな仕上がりになっています。人の頭の中をのぞくという背徳感もスリルがあり、某スタジオアニメではお目にかかれないアダルトな描写もあり、映画ファンにはニヤリのパロディもありで、なかなか面白かったんです、が…。肝心の話がついていけなーい!(←バカ) 専門用語的カタカナがポンポン出てきて、しかもそれに関する補足説明とかほとんどないものだから、頭がこんがらがってしまいました。こういうのは雰囲気なんだから理解する必要なし!なんでしょうが、もうちっと親切設計にして欲しかったよ。

パプリカ

2006年/日本 監督:今敏 アニメーション制作:マッドハウス 出演:林原めぐみ古谷徹江守徹大塚明夫堀勝之祐山寺宏一