バッド・テイスト

ニュージーランドの小さな田舎町カイホロから、ある日突然住人が消えた。エイリアンによる仕業とにらんだ地球防衛軍(5人)は早速調査に向かうが、すでにエイリアンの巣窟と化した町の様子を見て驚愕する。彼らの目的は、新鮮な人肉を売りにした飲食店を宇宙チェーンで出店すること。カイホロの住人達は、食用として全員ミンチにされてしまったのだ! さらに、何も知らずに街を訪れていた集金係の男がエイリアンに捕まってしまった。彼を救い出し、エイリアンをぶち殺せ! 地球を守るため、今、5人の男達が立ち上がる!


ピーターが新聞社のバイトの傍らコツコツコツコツ撮影し、友人知人家族&通りすがりの人まで巻き込み4年越しで完成させた記念すべき初監督作品。本当に本当に人手が足りなかったため、隊員デレクとエイリアンの手下ロバートを一人二役で演じています。しかも冒頭はデレクがロバートを拷問するシーン。つまりピーター・ジャクソンピーター・ジャクソンという、凡人の想像を越えた絵面が展開されています。ピーターはピーターを縛って崖から逆さ釣りにし、スニーカーの上から釘を刺して拷問するのですが、ピーターの反撃に合い崖から転落します。起き上がったピーターは頭がパックリ裂けて脳みそが散乱してしまいますが、適当に拾い集めて頭に押し込み復活! 正気を失いながらエイリアン退治に向かいます。このあたり、ピーターひとりで大熱演。ほかのメンバーが幼馴染や職場の同僚といった素人もいいとこの野郎ばかりで、のんびりのんびり演じてるので、よけいテンションの違いがはっきりして面白いです。

セットや特殊効果は頭がクラクラするほどチープなんですが、テクニックも機材もない中で、創意工夫のみでここまで作り上げてしまうなんてすごい。観ていてなんだか元気が出ますよ。クライマックス、宇宙船が飛び上がるシーンはうっかり感動しそうになりました(鑑賞ポイント間違ってる)。

もうすこしギャグが滑らかだったらよかったとか、室内だと画面が暗すぎて何をしているのか分かりづらいとか、その前に話がグダグダとか、いろいろ難点もありますが、ここは監督の心意気に免じて不問とさせていただきます。銃や通信機は全て手作り、特殊マスクはママのオーブンで焼き、スタッフ(友達)がばっくれれば道端の子供にアメをやって機材を操作させる*1。そうしながらカメラの前では誰よりも危険なシーンに挑み、誰よりも多くの血のりを浴び、ラストの大トリまでノンストップで突っ走る姿は全ピーターファンの涙と感動を誘います*2。ここから「指輪」「キングコング」とつながっていくのね〜。ちっとも想像つかないけど。

今のクオリティでこういうギャグっぽいものを撮ったらどうなるんでしょうね。観てみたいです。もっとも最近では「HALO」「ホビットの冒険」と立て続けに企画が潰れてしまったようですが……。

BAD TASTE

1987年/ニュージーランド 監督・脚本・撮影・出演:ピーター・ジャクソン 出演・撮影:テリー・ポッター、マイク・ミネット、ピート・オハーン、クレイグ・スミス

*1:映画秘宝2002年4月号の特集記事を参照しました。

*2:女性が一人も登場しないのも泣かせます。モテなかったんだろうなあ…。