プロヴァンスの贈りもの

例えばテレビを観ていて、そこに芸人さんが登場して、そいつが面白くなかったら、人はどういう行動に出るか。テレビのチャンネルを替えるか、トイレにでも行ってしまうか、まあどうせ3、4分のことだし、と我慢して観ちゃうか、そんな感じだと思うんです。例えそいつが相当痛いスベリ方をしていても、観る側には回避するすべがある。もしくは精神的余裕があるんです。
しかしそれが通用しないのが映画館。そしてスベリ続けるのが主人公のラッセル・クロウ。普段冗談とか言わないやつがおそらくすごい勇気を出して面白いこと言ってみたらびっくりするほどつまんなくって周囲ドン引きしちゃって、でもお互い何となく気を使って突っ込むこともスルーすることもできず全員いたたまれない気持ちになる、例えていうならそんな感じ(なげーよ)の映画です。逃げ場はありません。2時間耐久レースです。おまけに上映中は他のお客様とのおしゃべりはご遠慮しなくちゃいけません。ひたすら耐えるか、さもなくば1800円を「なかったこと」にして映画館を後にするか、2択しかないんです。
一応、私なりに感じた敗因を挙げておきますと、イメチェンに「ラブコメ」を選んだまではまあ悪くない。いや、正直ちょっと楽しみにしてたんですよ。しかし、やつにトム・ハンクスは無理だっちゅう話ですよ。あんなプライド高そうなガチムチ男を捕まえて、コミカルで軽妙なセリフ回しにベタなドタバタ劇ですよ。そんなラッシー観て喜ぶやつ世界で3人ぐらいしかいねーよ。明らかにツッコむ側の人間が無理矢理ボケたら痛いでしょ。こうなっちゃうのかなあ、ラッシーここに来てちょっと残念な感じになっちゃうのかなあ。あんた、2000年ぐらいまでは間違いなくこの世で一番モテてた男だったのに。
まあ、これ一作くらいだったら「なかったこと」にできますからね。コメディとの相性自体は決して悪くないと思うんで、次、まあ、頑張ればいいんじゃないかしら。