イノセント・ワールド 天下無賊

邦題がミスチルみたいなことになってるけど、原題はサブタイにもある「天下無賊 A world without thieves」。ということで今度のアンディは泥棒だ!しかもレネ・リウとの泥棒カップル!っても別にボニー&クライドみたいなハードボイルドな話ではなく、テーマはどうやら贖罪です。長い間コンビを組んでコソ泥をやってきたらしき彼らなわけですが、女のほうが急に足を洗って堅気になりたいと言い出すんですね。そんな恋人の変化に戸惑い苛立つ男。それはそのまま、惰性的な二人の関係に終止符を打つことになりそうで…とりあえず二人は旅に出る。土ぼこり舞う雲南の地を、大陸列車に乗って。
ひょんな成り行きから彼らに同行するのが、人を疑うことの知らない、純真無垢そのものの少年。えなりかずき似のこいつがまあ、見るからにドン臭くて世間知らずで、いーい存在感を放ってるんですよ。むさい防寒服を着て、ほっぺた真っ赤っかにして、駅の待合室でゆで卵とかかじってるんですよ。そんな彼は大金を持って里帰りをするところで、アンディはその金を狙ってるんですが、レネが邪魔をする。世間知らずの少年を守り、優しく面倒を見る。今までの生活で失ってしまった、己の純真さを贖うかのように。彼女はなぜ突然、堅気になりたいと言い出したのか、アンディはそれを受け入れるのかそれとも別れを選ぶのか。列車が終着駅に着くとき、彼らの運命はどこにたどり着いているのか……
っていうと何か格調高い感じなんですが、これだけで終わらないのが中華的サービス精神といいますか。大スター集めてこんなフランス映画みたいなん無いだろう、ということなんでしょうか、これになぜかマカロニウエスタン風アレンジが入ってるんですよね。同じ列車にはプロの窃盗集団も乗り合わせており、彼らも少年の金を狙ってるんです。そこへアンディ登場。鋭く視線を交わす両者。ええっ、何故突然!?と思う間もなく、ボスとの対決が始まります。エル・マリアッチ風のギターソロが流れる中、両者は一斉に得物に…ゆで卵に手を伸ばし、カラをむき始めます。本当にこういう展開なのでなんとも言いようがないのですが、こんなギャグだかシリアスだか判然としないシーンも随所にあり、大いに観客を惑わせてくれます。とはいえ旧正月映画にこういうゴッタ煮さがなかったら寂しいしね。中国高地の景色も風情あり、あとはラム・ガートンも観れたりで、個人的には満足できる作品でした。

天下無賊 A world without thieves

2005年/中国 監督:フォン・シャオガン 出演:アンディ・ラウ、レネ・リウ、グォ・ヨウ、ラム・ガートン、リー・ビンビン