スパイダーマン3

スパイダーマンが他のアメコミ実写よりも抜きん出ている要因のひとつに、青春ものとしての描写が優れているという点があります。徹底的にドン臭い男の子が高嶺の花を目指して頑張る、そのミジメでかっこ悪い姿に、みな自分の心のやらかい場所をギュウギュウ締め付けられてしまうのです。派手なヒロイックアクションと電車男を地でいくベタで不器用な恋愛模様、そのあざといまでに極端なバランスが観客をシビレさせていたのだと思うんです。2作めまでは。
しかし3作めにいたって、青春ものというタガはついに外れてしまったという気がします。ピーターは大好きな恋人を手に入れ、スーパーヒーローとしての自信も手に入れた。その驕りゆえに彼は苦悩しますが、その姿はすでに気弱な少年のものではなく、一人の男としてのものなんですね。登場する悪役たちだって今までのような超越的存在じゃないし、もはや眼鏡のカメラ童貞小僧というフォーマットは完全に不要となってしまった。今まで彼と肩を並べてあるいていたつもりの私達は、3作目に至ってついに一般人、スパイディの助けを待つ無名の一市民であることを突きつけられてしまった気がします。もちろん彼はヒーローとして正しい道筋を歩いているだけであり、それに少しばかり「セツナスなあ」と感じてしまった、というだけの話なんですが。
今回はシャマラン映画のミューズ、ブライス・ダラス・ハワードが大化けして出演。クレジットがなかったら最後まで本人とは気づかなかったかも。そして相変わらず肉々しいキルステン。彼女くらい貫禄があると、ちょっとぐらい虐げられても可哀想感が薄くてよいですね。
監督やキャストがこぞって続編への意欲を口にしている様子ですが、新章突入ということでそれはそれで楽しみですね。…てトビーは一体いくつまで大学生役を演じるんだ?